TMMP 今宵の雑学は酒の肴「春宵酔刻」 文・画 : 柄長 葉之輔 (えながようのすけ)

「月刊たる」収録ページ | 第31章 越後長岡の花火

この欄は,上記エッセイのテキスト部分です.テスト的な処置で,他の章にはこのページはありません.
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越後長岡の花火
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Fireworks
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異様に不気味で重苦しい空襲警報のサイレンが頭上に響き渡ると、信濃川長生橋の左手から三尺玉がシュルシュルと夜空に高く昇って行く。「わーっっ…、凄い! 凄い! 三尺玉だ…」とあちこちから歓声が上がってくる。漆黒の夜空に金色一色の光が視界一杯に広がり、光が目の前にこぼれてくる。と、若干遅れて「ドォーーン」と内臓を突き抜けるような大轟音が轟き渡る。
越後長岡は軍神山本五十六の生まれ故郷。それが理由か、地方都市にもかかわらず一九四五年八月一日米軍による大空襲があり、数千人の犠牲者を出した。鎮魂の為に大花火大会が毎年八月二日、三日の両日長岡信濃川で行われている。
三尺玉の大きさは外径86pで重さは200s、打ち上げ高さは600mにも達し、花火が開くと直径600mにも広がり、一日にたった二発しか打ち上げない。三尺玉の元祖は長岡で、地元ではプライドを込めて『越後の正三尺玉しょうさんじゃくだま』と言って他と一線を画している。
陽がとっぷり暮れる七時三〇分にスタートし、文字通り夜空に“スターが満員”『スターマイン』の連発で、一時間半の「光と音の大スペクタクル」は興奮と感動の連続。長岡のスターマインは他の花火大会とは違い、迫力満点で、イタリア火山に由来してベスビアス・スターマインと呼んでいる。
長岡花火の掉尾を飾る中越大地震復興祈願「フェニックス大花火」は、花火の中心にフェニックス(不死鳥)が描かれ、幅2q、6箇所の打ち上げ場所から平原綾香の『ジュピター』に合わせ、超大型ベスビアス・スターマインがこれでもか、これでもかと打ち上げられ、ドラマチックなリズムとともに、夜空に色とりどりのパノラマを繰り広げる。
一晩で二万発もの花火が打ち上げられ、それにストーリー性を持たせ、更に音楽に合わせてドラマチックに演出する訳であるから、昨今は当然コンピューターが欠かせない。因みに、長岡花火の総合演出ディレクターは池端信宏さんで、往年の若大将加山雄三さんのご長男だそうだ。
降る光 浴びて轟く 大音響
酔宵子