11月の第3木曜日、今年のボージョレ・ヌーボー解禁日は11月18日。 |
ボージョレ地区は、フランス南東部リヨンの北、ブルゴーニュ地方南部の丘陵地帯。元々、ボージョレ・ヌーボーとは、その年に収穫された黒葡萄ガメ種(Gamay)の出来具合を確認するための試飲酒のこと。であるからして、短期間にワインとして完成させるために、マセラシオン・カルボニック法(炭酸ガス浸潤法)という近代的急速発酵技術による促成醸造ワインなのである。 |
通常のワインの場合は、搾汁したブドウ液を酵母によりアルコール発酵させるのだが、ボージョレ・ヌーボーは、皮付きのままステンレスタンクに入れ自然発酵させ、炭酸ガスがタンクに充満するため、酸化が防止されワインがフレッシュに仕上がるのである。促成醸造だからといって決して馬鹿にしたものではなく、タンニンが少ないわりには色は濃く、渋みや苦味が少なく、ちょっと冷やして呑むとそれはしっかりした味わいがある。 |
ボージョレ・ヌーボーは19世紀頃からボージョレ地区の人々に楽しまれていた「地酒」であったが、1951年フランス政府によって11月15日を解禁日として発売を正式に認められた事を期に、パリで大人気となり、ブルゴーニュ好きのイギリスに火がつき、世界へと広がり、1984年には現在の11月の第3木曜日が解禁日と定められたのである。新し物好きの日本へは、1976年に航空便で開始され、バブル最盛期の狂乱は記憶に新しい。 |
ボージョレ・ヌーボーでボージョレ地区を一躍世界のひのき舞台に登場させたボージョレのスマートでお洒落なビジネス感覚は、将にボージョレ・マーケティングのサクセスストーリー。流石したたかなフランス人と感心させられる。我が日本も、ジャパン・クールの寿司に便乗して、パリでもニューヨークでも、寿司屋の入り口に杉の葉の「杉玉」を吊り下げて、ライスワイン・ヌーボーを世界に発信させたいものだ。 |
去年は「50年に一度の出来具合!」2008年は「今世紀最高!」と、毎年今年が最高と、ワイン業者は、意気込んではやし立てているが、世界的な猛暑であった今年は、糖度も十分で、それこそ、「有史以来の傑作!」か。 |
(「ボージョレ」はメディアやインポーターでは「ボジョレー」と表記される場合も多いが、今回は日本ソムリエ協会の正式呼称に拠る。) |