文・画 : 柄長 葉之輔 (えながようのすけ)
第三十九回 ビールがうまいぞ内臓脂肪
「はーい、頑張って。あと五分ですよ・・・・」。息は絶え絶え、汗、タラタラ、足はガタガタ。「ハァーハァー・・・・、もう駄目だ。有酸素運動といっても三十分はキツイィ・・・・。」
メタボリックシンドロームの改善と体力回復をと、今年の正月から一念発起、スポーツクラブでの惨めな姿である。
最近話題のメタボリックシンドロームの数値である内臓脂肪面積が110平方センチメーターで立派な内蔵肥満型。身長179センチ、体重72キロと、長年の暴飲暴食暴煙で、お腹も出ずに見かけはスリムなのであるが、体型判定では標準タイプの肥満型なのだそうだ。
入会時のカウンセリングと体力測定によると、上下バランスは虚弱との判定。思い出したようにマウンテンバイクに乗り、たまのゴルフしか体を動かさず、夜ごと夜ごと酒びたりの日々では体力の衰えは如何ともしがたい。
準備運動に始まり、30分の有酸素運動の後はいよいよ、筋力トレーニングである。
初々しい体育大学出の、かわいいインストラクターの懇切丁寧なマシーンの使い方レッスン。「ハイ、まずはこれにしましょう。レッグ・カールです。ハイ、息を吐いて・・・・。ハイ、イーチィ、ニーイィ・・・・。これを10回で、インターバルを取って3回やってください。」「ちょっと負荷をかけるくらいがいいので45キログラムでいきましょう。ハーイ、頑張って・・・・。」
レッグ・プレス、チェスト・プレス、バック・エクステンションなどなど、舌をかみそうなトレーニング器械7種類で、足腰腕胸腹首肩背と、徹底的に絞り鍛えあげるのである。奥歯ガタガタ、内臓が飛び出しそうな3セットが終われば、やっと開放。入念な整理体操の後は、一直線にサウナに直行である。
トレーニングであれだけ汗が出たのに、溜りに溜まったアルコール性分解分泌物のねっとりした汗が、まだまだよく出ること出ること・・・・。
きれいさっぱり、肌つやつや。何と心地よい爽快感と疲労感そして適度な空腹感。
気がつけば、これぞまさしく、美味しくビールを飲む為の必要十分条件ではないか。
内臓脂肪もなんのその。今夜も美味しく、ビールがうまい。