文・画 : 柄長 葉之輔 (えながようのすけ)
第三十三回 我が勝手なONとの記
栄えあるワールドベースボールクラシック優勝、王監督の胃癌発見、内視鏡手術による胃の切除のニュースは、富田侍従長の昭和天皇の靖国参拝告白とともに、我が戦後世代にとって衝撃的なニュースであった。「エーっ。あの不死身な一本足のワンちゃんが・・・。」
幸いなことに、もうすでに退院し、自宅療養、食事も開始し、散歩も始めたということでとりあえず一安心。
王監督とは自由が丘の小粋な雛鳥唐揚げ屋にお嬢さんとシーズンオフによくおいでになり、狭いカウンターで何度か隣同士でご一緒した。熱々の唐揚げを豪快にほう張りながらビールを飲み、気さくにお話したのが懐かしい。全日本監督、ソフトバンクの監督と、やはり監督業は激務なのであろう。
長島監督とは、小学五年の頃、川崎球場のバックネット裏で会ったのが最初で、「ウワーッ、デッケーなあ! でもカッコいいな!」と思って以来の一方的追っかけである。草野球をすればサードで四番を強要し、長島張りの派手なアクションで、守ればトンネル、打てば三振と、一人仲間の顰蹙を買ったものだ。
阪神との天覧試合での村山投手から放ったサヨナラホームラン、現役引退のときは後楽園での涙、絶叫。そして巨人監督就任、そして衝撃的監督更迭。その後どういう訳か文化人長島となって、テレビのインタビューで「カール! カール!」と一人はしゃいで浮いていても、「長島命」は変わらなかった。
その後再度巨人軍監督に復帰し、奇跡のメークドラマで優勝をしたオフの十一月、田園調布近くのサウナで一緒になったのである。それも平日昼間でお客は二人きり。「ゆう・・・っ、優勝、お・・・お目でとうございます。」と感動のあまり上ずった声で声をかけたのである。小学生以来の憧れの人が、目の前に、それも胸毛あらわに真っ裸で「イヤーッ。どーも、どーも・・・」とあの聞きなれた、頭に抜けるような甲高い生声が返ってきたのだ。
二年ほど前、都内のホテルでのボルドーワイン騎士団パーティでお会いし、サウナでの裸の出会いをよく覚えておられ再度感激したのだが、それから一か月後、長島監督倒れるという衝撃が突然報じられたのだ。
ONそれぞれ、危機を脱し、元気な姿をそろって見られる日も近いであろうが・・・。
しかし、我が戦後生まれも還暦を迎えるわけで、長島・王も当然歳を重ねているわけだ。
でも、「我が巨人軍・・・いや、我がONは不滅です。」とあって欲しいものだが・・・。