文・画 : 柄長 葉之輔 (えながようのすけ)
第二十回 背広・かみしも・クールビズ
「何だコリャ?」テレビの国会中継にチャンネルを合わせると、脂ぎった顔に、禿げ上がった頭の議員さんたちが、こともあろうに、白やピンクのワイシャツのボタンをはずし、ノーネクタイ姿で画面に飛び込んできた。まるで、老人向けカジュアルウエアーショーの楽屋裏の雰囲気。
たとえ、地球温暖化対策のためとは言え、国権の最高機関で、ましてや国民監視のもと、国民の血税で生きている輩が、このような格好は如何なものであろう。
一方、こともあろうに、国会の合間、わざわざ首相官邸で背広とネクタイに着替えて、プライベートでオペラ鑑賞に行くとは・・・。
神父、神主、坊主、医者、果ては裁判官に至っては、仰々しいガウンも脱ぎ捨てるのであろうか。これじゃ、節度も伝統もあったものではない。
日本の武家社会では例え厳しい暑さの時でさえ、羽織袴で登城したし、貴族社会でも賑々しい衣装で参内していた。大正、昭和、戦後になっても、官民問わず、冷房もない扇風機だけの職場で、貧しいながらも、糊のパリッと効いた麻の背広を着込んで、白い靴にパナマ帽と洒落込んでいたものだ。
本質的に、肩と胸に張りが無く、姿勢の悪い日本人の中高年の体形には、クールビズと称する服装は似合わず、より貧弱、貧相、だらしなく見える。東南アジア、地中海沿岸諸国の人たちのスタイルには、長い歴史があり、それなりの品格が感じられるが、日本の場合はどうもいただけない。
エネルギー節約のために、こんなくだらない運動を率先するならば、一層のこと、冬の国会をオーバー、セーター、ダウンジャケット着用可にしてしまっては・・・。
一時、省エネルックというものが突然出現し、瞬く間に消滅してしまったが、今回も一過性で終わってしまうであろう。しかし、今時の政治家は、郵政、北朝鮮などの差し迫った重要課題には消極的で、くだらないことには与野党ともに積極的で、協調的である。
一説によると、クールビズを一式揃えるためには、サラリーマン一人平均9万円の出費が必要とされるらしい。つまり、今回のクールビズ運動の真の狙いは、低迷した日本経済の活性化のためなのである。
やはり、男子いったん家を出たら、やせ我慢が大切。「暑い、暑い」といいながら、仕事帰りのビヤホールで、冷え冷えの生ビールを、ネクタイを緩めながら飲むのが一番おいしい。
我が節度ある紳士諸兄! クールビズに無駄金を使わず、その分おいしくクールビールを飲むべし。