TMMP 酒と肴のエッセイ「酔いの徒然」 文・画 : 柄長 葉之輔 (えながようのすけ)

第十六回 オリーブ讃歌

信じられない幼児の連れ去りや行きずりの殺傷など殺伐とした事件が頻発し、これでもかこれでもかと社会面をにぎわしている。ある著名な医学博士によると、その主な原因は、人間の活動の源である脂肪酸の問題であると、喝破している。
人間の脳の60%が脂肪酸で構成され、特に未成熟な脳を形成させる幼児期には、いい脂肪酸の摂取が必要になってくる。しかし、身の回りには、植物油といっても化学処理抽出した脂肪酸であり、またそれらを利用した加工食品が“ヘルシー食品”として市場を席巻している。特に水素添加で固形化させたマーガリンとクローン病の関係を最初に指摘したのはドイツのクローン博士で、マーガリンもショートニングも、そして精製油も、カビも生えない、虫も食べないプラスチック脂肪酸(トランス脂肪酸)なのである。
車もたとえいいエンジンを備えていても、その動力源であるガソリンが粗悪なものであれば、エンストは当然、いい走りもしないしエンジン自身をも破壊させてもしまう。

今、将に、我々人間がその車の脅威にさらされている。
それでは一体どんな脂肪酸がいいのか・・・。
それは、燦燦とした太陽の光と、豊かな大地に育まれたオリーブの実から採れる一番絞りジュース、つまりエキストラバージンオリーブオイルなのである。
ノアの箱舟にも飛び立った鳩によってもたらされ、聖書にも「オリーブは薬である」と記されたオリーブは、古代より生活に欠かせないものであった。不飽和脂肪酸のオレイン酸が豊かで、ビタミン、ポリフェノール、スクワレンなど希少有益物質を豊かに含んだオリーブオイルは、母乳の脂肪酸組成と限りなく酷似し、神のすばらしい贈り物である。
国連の旗も、彼のアラファト議長の棺にも、アテネオリンピックの勝者への冠にも、オリーブは、平和と健康のシンボルなのである。
「今、あなたが健康を取り戻したいなら、キッチンにあるオリーブオイル以外の全ての油を、直ちに捨てなさい!」と数年前、米国テレビで、有名医師が呼びかけたところ、大変な反応であったそうだ。

現在、アメリカ西海岸を中心にオリーブの栽培が盛んで、メキシコ、アルゼンチン、オーストラリアまで、ワインと同じ現象が世界的に広がっている。
成る程。それでは、今宵はスタッフドオリーブ入りのマティニーでも飲んで・・・せめて気持ちだけは健康に・・・。