TMMP 酒と肴のエッセイ「酔いの徒然」 文・画 : 柄長 葉之輔 (えながようのすけ)

第十一回 NO SMOKING

愛煙家には肩身の狭い昨今である。地下鉄、私鉄は勿論、JRのホームでも、禁煙が徹底して来ている。新幹線の駅構内でも、「やれやれ、ほっと一服」のためには、延々ホームの端まで歩いて行かねばならず、高速道路のサービスエリアでは、屋外で雨風寒さに晒されながら、惨めに吸わなければならない。
空港でも勿論、愛煙家でも不快になる「煙にまみれた喫煙室」を除いて、全面禁煙。
事あるごとに極端で、エキセントリックなカリフォルニアでは、禁煙ビーチ、禁煙タウンまであって、たとえその地区を通過する車の中で吸ったとしても、 ポリスが現行犯逮捕、即座に罰金の始末。彼のギネス・アイリッシュウイスキーの呑兵衛大国アイルランドでも、バーでの喫煙全面禁止。長髪禁止で名を馳せたシンガポールに至っては、自分の車でも禁煙で、煙草のポイ捨てでも10万円の罰金。勿論、店で煙草を買えば、1箱900円と高く、在ろう事かその煙草のラベル一つ一つに、煙草の害で、弱弱しい赤ん坊や痩せ細った青年が、病院ベットに息絶え絶えに横たわっている写真を大きく貼っている。
そして大きく、“WARNING: SMOKING CAN CAUSE A SLOW PAINFUL DEATH QUIT”と書かれているのである。  
「こんな惨めな思いをするなら、一層のこと禁煙するか」とも思うが、やっぱり止められない。
食事のあとの一服。緊張した会議の後の一服。原稿を書きながらの一服。絵を描きながらの一服。・・・・一服。
特に、行きつけのバーカウンターで、一人ウイスキーロックを傾けながら、紫煙がカウンターを照らすスポットライトに吸い込まれていく様子をボーっと眺めるのは、呑兵衛愛煙家の至福の時であるのに・・・。
いまさら無理して禁煙したら、
NO SMOKING CAN CAUSE A QUICK MENTAL DEATH